大判例

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東京高等裁判所 昭和49年(行ケ)114号 判決

一 前掲請求の原因事実中、本願発明の出願から審決成立にいたる特許庁の手続、発明の要旨及び審決の理由に関する事実は当事者間に争いがない。

二 そこで、右審決に原告主張の違法があるか否かについて審究する。

本願発明が実施態様1の装置を含むこと、本願出願前公知の各引用例に右審決認定の前掲装置が記載されていること、本願発明の実施態様1の装置において、右審決認定のとおり案内管が固定し、つる巻状リボンが容器内壁と案内管外壁の間において回転するようになつている点に限つて引用例1の装置と相違することは当事者間に争いがない。そして、前掲本願発明の要旨及び引用例1の記載内容並びにいずれも成立に争いのない甲第二号証の二、五、八(本願発明の明細書及び図面並びに補正書)及び第三号証(引用例1)を総合すれば、引用例1の装置は、粘性液体を混合、攪拌することを目的とするものであつて、案内管内のかきまぜ部材の回転により粘性液体を混合すると同時に案内管の外壁に固定されたつる巻状リボンが案内管の回転に伴い容器内壁と案内管外壁との間の環状空間内を回転して、粘性液体が壁面に附着しないようにし、また固着した粘性物質をこすり取り、かつ、粘性液体を流動環流させ、かくして十分にその目的を達しようとするものであるが、つる巻状リボンの固定部が死点となつて液体静止層が生じ、均一な混合を妨げ、また、右静止層中の不溶物等が壁面等に附着する欠点を免れないこと、一方また本願発明の実施態様1の装置も、引用例1と同様、粘性液体を混合することを目的とするものであつて、同引用例と同じような構成で同じような作用を営む部材からなるが、ただ、案内管が固定してつる巻状リボンだけが案内管に固定せずに回転する構成となつているため、右引用例にみられる前記のような欠点がないことが認められる。

ところが、前掲引用例2の記載内容及び成立に争いのない甲第四号証(引用例2)によれば、同引用例の装置もまた、粘稠な溶液を混合させることを目的とし、本願発明の実施態様1及び引用例1の各装置と同じように、容器及び案内管を備え、案内管内のかきまぜ部材により、溶液を混合すると同時に下方に移動させ、更に容器内壁と案内管外壁との間の環状空間を経て上方に循環させるものであるが、案内管を固定して回転させず、かき取り器が右環状空間内で回転して粘性物質を壁面に附着させないようにし、かつ固着した粘性物質を削り取るようにして装置全体としての溶液の循環、混合を促進させるものであることが認められる。

してみると、これらの装置は、いずれも粘性液体を均一に混合するため、これが装置内で静止せず、また粘性物質が壁面等に附着しないように配慮し、できるだけ液体を循環させつつ、十分に混合しようとする技術思想に立脚するものであることが明らかであり、それならば、引用例1の装置におけるつる巻状リボンの案内管固定部の死点による欠点を解消するため、案内管を固定し、かき取り器だけが環状空間内で回転する引用例2の構成に基づき、本願発明の実施態様1のように、案内管を固定し、つる巻状リボンだけを回転させるように構成する程度のことはこの技術分野における当業者にとつて容易に想到しうるところであるというべきである。

なお、さきに認定の事実及び成立に争いのない甲第五号証によれば、本願発明の実施態様1の装置は、原告主張の点において引用例1のものよりすぐれた効果を奏し、また、引用例2のようなかき取り器を用いずに粘性液体を十分均一に混合することができるものであることを認めることが、できるが、それは、本願発明の実施態様1が引用例1のものと相違する構成をとつたことに伴う当然の結果であつて、各引用例から予測しうる範囲のものたるにすぎない。

以上の次第で、本願発明は各引用例から容易に発明しうるものであつて、特許法第二九条第二項の規定により特許を受けることができないというべきであるから、本件審決の判断に原告主張の違法を認めることはできない。

三 よつて、本件審決の違法を主張してその取消を求める原告の本訴請求を理由がないものとして棄却する。

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